日曜日はなかった。

Sunday is dead. 日々の雑感。見たアニメや映画、読んだ本とかについて。

ポロポロこぼれる泣き方が好きだ。〈平成生まれ〉感想

偶然本屋で「まんがタイムきららキャラット」を手に取りパラパラめくっていると、工夫を凝らしつつも定型からは外れない萌えキャラがいつもの安心を繰り出している。ああ、甘くて優しくて心がフラットになる。しかしあの瞬間はわたあめを食べていたら歯が折れたようだった。
他に比べて明らかにシンプルな、しかし妙な不安感を煽る絵柄のマンガがあったのだ。これは城ヶ崎さんだらけのクラスで一人野口さんがいるような確実に「あの子はちょっと私たちと違うから……」ってハブされる尖がりかただ。僕は先鋭化してる作品が好きなので、読んでみれば登場人物のひとりが理由なくずっと震えている。「シャブでもキメてんのか…ヤベえ……」と戦慄した。それが「平成生まれ2」との出会いだった。
 
彼が〈平成生まれ〉の既刊を買うその時まで、あと一ヶ月のことでした。(cv. 松平定知アナ)
 
平成生まれの話をしたい。
 
1989年1月8日以降の生まれを煽っているわけではない。煽っているのはこんなタイトルをつけた作者・ハトポポコであって僕ではない。

 

平成生まれ2 (2) (まんがタイムKRコミックス)

平成生まれ2 (2) (まんがタイムKRコミックス)

 

 

これは楽しみにしている四コマ漫画のひとつ、ハトポポコの平成生まれシリーズ最新刊の『平成生まれ2』だ。僕は読み終わりました。

最初見たとき「2の2(笑)なんだそりゃ」と笑ってしまったが別段面白いことじゃないと気付いてすぐ真顔になった。
私の笑いのハードルはもうだいぶ低いのだ。
 
だからといって私のハードルがバリアフリーとかは影響せず、『平成生まれ』はいまのところ直接貸しつけた人間には好評をもって迎え入れられているのでこれは良いものだと胸をはれる。
よってせっかくなのでこの電子の海の端っこでも、これがどんなおもしろ四コマでインタレスティングなコミックかいいたい。
 
日常系でほぼ舞台は教室だ。ほぼ外へ出ない。
普通の日常系よりもさらにソリッドシチュエーションだ。
躍動感の欠片もない。
やばいほど何も起こらない。
あとはそうですね。しいていえば闇とエロスでしょうか。
きららなのに。

■暗黒生まれ

なぜだろう。〈平成生まれ〉は闇を感じる。
というかハトポポコが闇なのだと思うが、その話は置いておく。
モブほど瞳が綺麗で、メインとなる彼女たちの瞳になるこそハイライトがなくなって瞳孔が開いてくることにこのマンガの暗黒性が象徴されている。あれは光を吸い込むブラックホールなのだ。
 
たとえばメインキャラクターの佐藤だろう。瞳も真っ黒だ。だいたい人を煽る会話に定評がある。
主に佐藤がからむのは四村さんだが、四村さんは佐藤を殴ったりして軽くいなす。ここらへんの形式は『キルミーベイベー』に代表されて、ウザキャラと暴力ツッコミの形式だ。
 
こういう形式は僕なんて「友達のあまりいない彼女が自分に関心をもってもらいたいばかりに人へちょっかいをだす図」にしか見えないもの。
佐藤の素直じゃない言動は小賢しく人に面倒くさがられるので、適当な態度を取られたときの佐藤の2コマに続く無表情はつらくなってくる時さえある。
人間関係に不器用な人間を垣間見るようでたいへん胸にくるものがある。
 
または、原田さんだ。長身メガネの彼女の瞳ももちろん真っ黒なのはいうまでもない。
彼女は万能である。持ったものの重さを人間なら食べたものまで含んで判断できるし、湿度を小数点第一位まで当てられたりする。能力はそれだけではないけれど、割愛する。
とにかく人間ではないような能力(チカラ)をもっている。
彼女は中川さんという少女となかよしだ。
中川さんはクラスいちの良い子で、誰にでも好かれている。それを鼻にかけるようなこともなく少し天然なところもある。彼女は原田さんと一番のなかよしだ。
原田さんは中川さんの身体をピカピカに洗いたいし、舌を触ってみたいし、中川さんの眼球そっくりの模型を作ってみたりするほど中川さんが好きである。
というか彼女の言動をみていると好きすぎて中川さんと一体化したいのだと思う。
 
かわいらしい少女が登山をするアニメ『ヤマノススメ』とか見て、「今まで心配されたことがない、か…楓さんは両親との関係あんまりよくなさそうだな~」とか「女の子だけで登山ねえ…クマ、遭難、雪崩、ふ~ん……」って不穏な妄想をするのが無類に大好きな人間からすると彼女の中川さんへの依存は僕の妄想を駆り立てて、とにかくこういうのが大好きな人にはたまらないものがある。
 
長々話していても仕方ない。キャラ多いから。
まあ、なにか言い知れぬ闇を感じていただいたら結構だ。わかるひとわかれ。
 
見た目ひどいことになっていない女の子がひどいことになる(なってる)んじゃないかって話が好きなひとは、まだ〈平成生まれ〉買ってなければすぐにもオススメしたい。
(ニッチ)
いかんせん線の少ないこざっぱりした表現なので、暗黒清涼飲料水として夏の運動後みたいにゴクゴク飲めよう。おいしい。

■エロス生まれ

フィリップ、キーワードは
 
平成生まれ ハトポポコ エロ だ。
 
それで僕は検索をはじめよう。
 
はい。平成生まれは妙なエロスがありますね。
 
えっ? この絵で?
ってなったそこのあなた。ぶっ飛ばすぞー。
 
こればかりは読んでいただきたいが、(きらららしく女子高ゆえか)キャラたちの無防備な姿勢や会話に生生しい等身大のエロスを感じる。
高校男子がクラスの女の子に時折見出す、ハッとするエロスだ。
あとふつーに彼女たちの下着の図がのってたりする。たまにあるエロチックな扉絵や『平成生まれ2』2巻のサウナ回とかわかりやすい。
 
あとはキャラクター性である。
クラス1の美少女でモデルもやってる藤井はバカである。間違えてランドセルを背負ってきたり、雪が降ったらシロップをかけて真顔でもりもり食べている。
佐藤いわく、スタイル良くてむかつくが「バカそうだから許してやるか」
こういう女の子はおじさんにすぐいたずらされちゃうだろー。絶対さー。
モデルって芸能界だよぉ? エロ同人誌作りがいあるだろこれー。
 
中川さんも、頼みまくればしょっちゅう原田さんに身体を許しているので(舌とか)、ちょろい感じがいけない。
 
いくらでも中学生やおっさんみたいな想像力が働く。その全部を書くわけにはいきません。僕はクールです。
クールになっちゃいけないのは、絵が描けるであろう絵描き同人マンガ家のみなさん。ここは金脈ですよ。

■フェニックスポポコ

そんな素敵な平成生まれも、『平成生まれ2』が2巻で最終回となった。まじか。
ちなみに最後まで森口がなぜ震えていたのかは判明しなかった。
でも何度でも蘇る。今『3』が本誌で再開中という。僕は単行本派なので見ていない。
 
ただ『2』2巻がべらぼうに最終回雰囲気をかもし出していたので、モーレツに現状のメンバーが『3』に続いているのか、レギュラー一新なのか怖くて見れない。なお、こうした日常系の最終巻雰囲気は『あずまんが大王』最終巻がつらすぎて再読できない僕にとって強烈なダメージを与えるものなのだ。『2』最終話の佐藤とかたまらない。余談だが、ハトポポコの描く女の子の泣き顔が好きである。
 
基本的に日常系萌え四コママンガは、自分もこんな優しい世界にいきたいぞい、美少女動物園をずっと眺めていたいぞい、と羨望してしまうものだがこの作品についてはまったくそうは思わない。彼女らは素敵な学校生活を送るわけでもない、なんとなく消費されゆく日常という薄っぺらさでどうも読んでいる自分らに肉薄してしまう。それでもやっぱり、どうも不思議な魅力があってクセになる。
 
気付けばハトポポコ信者だ。ポポコ様、どうか叶うならずっと彼女たちを読んでいたいです。

 

平成生まれ (1) (まんがタイムKRコミックス)

平成生まれ (1) (まんがタイムKRコミックス)