日曜日はなかった。

Sunday is dead. 日々の雑感。見たアニメや映画、読んだ本とかについて。

僕らはスカートのしたに魚系女怪人を見る『深海魚のアンコさん』感想

■今回はエロエロ言い過ぎた

僕のぽんこつなアンテナのせいかコミックリュウの努力の賜物かわからないけれど、ちゃくちゃくと「人外」とか「亜人」のキャラクターをアニメやマンガで見かけるようになったと感じている昨今。ラミアやケンタウロスの美少女がスライム娘の粘液まみれになったりハーピーが無精卵の出産をしたりと、人間でないから良いとばかりにいやらしい今期アニメ『モンスター娘のいる日常』も喜んで視聴している。
 
たぶん世のお母さん方も『プリズマ☆イリヤ』を息子が深夜隠れて見ているよりか、ハーピーの出産とかラミアの脱皮を真っ暗なリビングで見てる息子のほうに学研のいきもの図鑑めいた健全さを見出すのではないか。水族館や爬虫類館も暗いし。アリバイ的にその子が常日頃トカゲやザリガニを飼ってたりするとなおよろしい。母さん、ぼくいきものが大好きなんだ。とても生きやすい世になりましたね。
 
そんないきものだいすきな僕が本屋で買い続けて周囲に勧め、数ページぱらぱらめくった先輩に「へえ……〇〇くんはこういうのが好きなんだ…」と興味なさげに流されたマンガ『深海魚のアンコさん』がこのたび最終4巻を迎えていた。僕はつらくなった。
 
ネタの在庫としていつまでも続けられるものとは思っていなかったが、ワクワクしながら4巻の表紙を開いた僕は「最終巻です。」との文字を視認した瞬間、足元の床が抜けて宙へ投げ出された程度の心理的衝撃を与えられた。帯とか表紙に最終巻雰囲気が微塵もない最終巻は心臓によろしくないのだ。とりあえず植物図鑑、動物図鑑、魚図鑑、深海魚のアンコさんと並べてしまおう。4巻まで楽しませてくれてありがとう。
 
犬犬・作『深海魚のアンコさん』は、人間とは別に人魚が地上で暮らしている世界で、人魚の女子高校生アンコさんと、その友人であり過度の人魚オタクである若狭ちゃんの織り成すドタバタコメディである。そしてこのマンガは時々とてもエロい。
 
エロねえ。でも人魚はポピュラーな感じがして、いまさら…。「モン娘」の人魚キャラだって人魚要素よりも地上で車椅子乗ってる要素のほうがグッとくるんだよなあ…って罪深い人間も多いんじゃなかろうか。僕だってそうだ。(仲間をさがす目つき)
 
女の子の下半身が魚だと、その部分へ意識がいってしまうがゆえにむしろ隠匿された脚が際立つのだろうか。首まで魚の日本式マーメイドや美脚の魚は人間部分の体積が少なくなるから、人間部分が隠匿してるのは魚の部分になってしまって魚くささが前面化するのだろうか。なるほど、隠されているというのが大事だ。我々は青春時代に女の子を直視できずうつむきながらチラチラみている日陰の生き物だった。無駄に長かった前髪も貴様のメガネも全て視線を悟られないために利用してきた器官だった。視線を避け眼を合わせず、背中で気配を感じて制服の衣擦れの向こう側に彼女たちを索敵していたレーダーマンたち。深海魚や洞窟の生き物ばりに鋭敏化した暗い妄想の末、我々は見ないことによって心眼が開かれていたのではなかったか。(おおきい主語)
だからいかにモン娘が粘液ぬるぬるでマーメイドのビキニがポロンポロンしようが、それは乳首解禁や不自然な光の帯が消えた円盤特典みたいなおっぱいでビンタしてくるアメリカンでハイテンションな西海岸的エロスなわけだ。実は欲しいのはそういうことでなくて、夏だったら女の子がラムネ飲んでるのを妙に唇よりなカメラで映すとか、熱射の昼下がりに汗だくで畳部屋に座らせておくだけだとか、麦茶の氷がカランと鳴るだとか、実質的なエロじゃないはずなのにエロくみえるシチュエーションっていうのはとりわけHなわけですよ。エロく見えないけどエロい隙間が閉塞感を打破するのに必要なんです。スカートの中が見えなくたってそこにスカートという未観測域があれば真っ白なキャンパスにいくらでも想像の宇宙を描けたわけじゃないか。シュレーディンガーの猫とか何のために意味も分からず覚えたのだ。僕たち誰もが一度は中学生だったんですよ。
 
で、アンコさんはチョウチンアンコウの人魚なんです。アンコさんは自分のチョウチンアンコウである不恰好な尾びれにコンプレックスを抱いているんです。
 
人魚たちは人魚薬なる市販薬を服用することで二本足を獲得し、地上で生活が出来るようになっているのだけれど、薬の効果が図らずも切れてしまったアンコさんが若狭ちゃんの前で誰にも見せたくなかった尾びれを見せてしまう第1話があるんですけど。こちらで試し読みできるんですけど。
  
保健室のベッドの上で! ぶっきらぼうで気の強かったはずの気になるあの娘が! 人に見せたくなかった身体の部分を見られたショックで泣いちゃう…!
だいたい、かわいいあの娘が苦しそうだったので保健委員の私が手を上げてトイレへつれて行こうとしたら、自分の目の前で漏らしちゃったよ。って感じの状況です。あっ、これイケないもの見ちゃったなあ。そのピチピチピッチな尾びれに友人の若狭さんが「アンコ かわいい…」「わたし、なんか感動しちゃった…」と神秘的な生命の営みを目の当たりにしたようなコメントをするのだ。
 
まあ、なんだろう。ほんっとエロいよね。
見てるの魚の尾びれなのに、上に恥らう女の子の上半身がついてればいいわけ。尾びれは性のシンボルなんですな。あと関係ないけど、アンコさんたち人魚はパンツはいてないっぽい。
 
毎話いろんな魚の人魚の女の子が登場して、いきもの図鑑っぽい楽しみもつよい。繰り返し読めばあだ名はハカセかさかなクンだ。さんを付けろよデコ介野朗する練習をしておこう。
ウナギ娘は緊張すると皮膚から粘液だらだら出してブラウス透けさせてしまうし、ブルーディスカス娘は体表からミルクを出す。僕は鮫島先輩をオススメして、彼女はサメだから近眼で目つきの悪いメガネっ娘だし、生魚とかバリボリたべてギザ歯を血で真っ赤にしている。こういうちょっと違う彼女だけの秘密みたいなものを往々にして僕らは欲し続けてこういう作品を摂取している節があるから、ニーズに答えるとこのマンガのような様々なちょっと普通でない女の子の日常を描いた美少女怪人図鑑が一定層に届くのだ。ロボだろうが宇宙人だろうが妖怪だろうが亜人や人外だろうが、少し人ならざるものに甘酸っぱかったり少しHな憧れを見出そうとするのは、見えないものを見ようとした中学生の心眼がうずいている。最近は人外ブームだっていうのなら、我々は女怪人を望んでいる。女怪人の女の子の部分と怪人の部分を半分半分で見たがって、これは見世物小屋見物のような精神も一緒なんだ。ああ、女怪人は強さと切なさと、エロさでできている。こうした素敵なものの周りで右往左往して良イーッ良ィーッいってる僕は全身タイツと眼だし帽の着用義務も重いキックを受けるリスクもなく、たいへんオモシロく読めてしあわせなのだなあ。
深海魚のアンコさん(1) (メテオCOMICS)

深海魚のアンコさん(1) (メテオCOMICS)