日曜日はなかった。

Sunday is dead. 日々の雑感。見たアニメや映画、読んだ本とかについて。

にじみでる死と退廃の学園コメディ!〈スクール・アーキテクト〉感想

みんな大好き「まんがタイムきらら」といえば、荒廃した自我に癒しを与える陽だまりのような四コマ雑誌です。
 
暖かいね。
明るいね。
石の下のダンゴムシにはまぶしすぎるね。
 
光あるところ影があるように、ダンゴムシにはダンゴムシ用とばかりに、なんか知らんがきららにも暗くてジメジメした隙間は用意されていて虫たちの需要を補っていることをご存知ですか。
 
存じている。よろしい。
 
そうだね。闇属性作家陣といえばハトポポコ『平成生まれ』とかそうだと思うし、挙げると案外あるんだけど(カヅホ, きゆずきさとこ, kashmir etc. etc...)、てか結構あるな……、そんななかでがっつり僕の心臓を串刺しにしたことで人におすすめしたくてならないのは器械である。表紙買いした。
それは『アキタランド・ゴシック』。あきためく北の大地から贈られた。角っ娘とその友達の過ごす、少し不思議で闇深いゴシックファンタジーである。
そのなかにあった、かわゆい角ロリのアキタちゃんが「文化の波」で、虫のごときボディのメカ娘に変貌する回は、萌え四コマ読んでたら諸星大二郎『バイオの風』的なイベント起きるなんて思ってない僕の萌えヒューズを飛ばしました。
 
続けざまに続刊を買って、友達にいかに面白いか推薦してたら「死の匂い死の匂いうっさい」言われました。僕はどんな人間だよ。確かに「このまんがは死のにおいがする!」って言ったけど。
 

 

スクール・アーキテクト (2) (まんがタイムKRコミックス)

スクール・アーキテクト (2) (まんがタイムKRコミックス)

 

 

スクール・アーキテクト (1) (まんがタイムKRコミックス)
 

 

てなわけで、そんな暗い萌えとコメディを提供してくれる器械先生、その最新作である『スクール・アーキテクト』の2巻を買いました。
 
今回したいのは、この話なんですよ。
 
〈スクール・アーキテクト〉は基本的にキャラクターらがキャッキャしてるコメディです。
 
ただ、メインストーリーが1巻と2巻のどちらにもあって、1巻では謎の学校空間に閉じ込められた少女たちのビューティフル・ドリーマーな学校生活、2巻は感情をコントロールするナノマシンを全校生徒に接種しようと、生徒会長が強行をはかった顛末、そして願いをかなえる願望機とは? その騒動が軸だった。
 
うん。
なんだかきらら四コマとしては、雲行きが怪しくなってきただろう。
願望機はストガルツキーの「ストーカー」かい。

■ そのむすめは 肉でできている

学園コメディの例に漏れず、個性的な少女たちが数多く登場するわけである。
コメディリリーフなセクハラ少女に猫娘、目つきが怖いことや身長が低いことに悩む少女たち、そんな日常系十代なキャラクターに混ざってほほえましく見渡していると、金属製の竹馬を装備して足長シルエットの少女や、骨をコレクションし人骨に焦がれる少女、弟の鼓動とリンクする模造心臓をお守りにした姉など、だんだんどうも退廃的なメンツが散見してくる。
 
僕の一押しでお勧めするのは、「舌美人」の蛇ノ崎さんで、彼女は幼いころ友達に舌の長さを褒められて以来、なんのとりえもない自分にとって唯一の長所が「舌の長さ」だと思っている少女だ。
 
舌の長さがアイデンティティって、中学生の女の子がそれは切なすぎるだろ。
 
友達との何気ない会話が最上の思い出と語られている様子に、それ以降褒められたことがなかったんだろうかとか、 舌に特化して相対的なそれ以外の自尊心の低さが目について僕の頭を暗い想像が駆けまわる。
進路相談のプリントに「舌師」と書いたのを消して「OL」に直す蛇ノ崎さんに、胸をかきむしるようなたまらないものを感じた。この思いわかってくれ。
 
こうした器械の女の子は、どうも「肉で出来ている」感を強く感じる。
これはエロスの意味ではない。
彼女たちは血肉と骨、心臓を持っているってことである。
 
四コマ漫画といえば比較的デフォルメされて記号的な絵柄のはずなのに、臓器とか骨格とかがサラッと話題に出てくるせいなのか、彼女たちは肉の体を持っていることを強く意識してしまう四コマなのだこれは。
1巻でたとえば少女は初潮を迎え、2巻でたとえば脳みそも操作されるのだ。
女の子の初潮が四コマコメディで触れられてるの初めて見ましたよ。
 
そして特筆すべきはにじみ出る作者の「死と退廃」趣味である。
なんとかしてきららに虫や多脚、肉体改造とかの「異形」や「クリーチャー」といった黒い趣味をねじ込みたいって、つよい意志をかんじるんだ……!
 
だがしかし、学校という箱庭的空間でダークでファンタジーな匂いが充満していても、基本ラインはコメディなのでそういったシリアスな空気がへんに気取った嫌味にならず、よろしい具合に中和されているのがとても良い。
 
おかげで少女たちの「肉」っぽさに、罪深き読み手はよろこんで頭をかきむしってられるのだ。おかげでちゃんと届く層には届いている。
 
だが〈スクール・アーキテクト〉は2巻で最終巻だったので、僕は気が気でない。
器械先生、つぎもお願いします。ダンゴムシは湿ったニーズの隙間に届く作品を願望しているのです。
 
アキタランド・ゴシック (1) (まんがタイムKRコミックス)

アキタランド・ゴシック (1) (まんがタイムKRコミックス)

 

 ■The 時系列(ネタバレ)

一巻と二巻で時系列が前後していると思われるのでので、なんの役に立つかわかりませんが個人的に考察したことを書いておきます。
 
まず1巻の学校と2巻の学校は同じ舞台なのかという問題は、1巻48p1コマ目から同じ「北中学」だとわかる。
 
時系列は、
まず1巻52p 2コマ目で誘木さんが書類持ってるのを確認。
その書類が2巻98pで生徒会室に届くので、時系列的には2巻の騒動後に1巻の騒動が起きていることになる。
誘木さんが1年生に先輩と呼ばれており、1巻のメインメンバーは「足長の君」1巻37p 3〜4コマ目から2年生とわかっているので年月の移動はなく、時系列はこれで妥当だと思う。
 
これを考えて発見したのは、1巻のメインメンバーたちはもう全員ナノマシン埋め込まれてる状態なんだってことだった。おもしろい。
 
1巻最後のサプライズはなんだったのかまだ少しわからんのだけれども、2巻の最後で登場する1巻のメンバーの封じられたはずの記憶が戻っているので、全員があの世界で1年間暮らすことを自分の意思で望むことにしたようだ。その記憶改変にコタは余計な血を使っていたっぽいので、点滴が消えたのはそういうことだろうか。
 
みんな覚悟してのビューティフル・ドリーマー世界でやっと毎日が夏休みなので、そこで平凡な1年間を過ごせるならお姉さん(18歳 中学生)も良かったねえ。
 

 なお、闇のハトポポコについてしたためたのは↓です。

nakatta.hatenablog.com

 

「 バイオの風だ!」

未来歳時記バイオの黙示録 (ヤングジャンプコミックス)

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