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日曜日はなかった。

Sunday is dead. 日々の雑感。見たアニメや映画、読んだ本とかについて。

『尾道てのひら怪談』やっぱり猫が多かった。あと、ありがとうございます。

 

800文字で書ける、てのひら怪談のお祭りが大阪飛んで尾道でもありました。

尾道てのひら怪談

 

onomichikwaidan.wixsite.com

昔一度だけ旅行はしたことがありますが、あの怪しげな感じはほんと絵になりますよね。まさに怪談。ばっちしな雰囲気でございます。

 

薄弱な私の脳裏にはノスタルジックな坂道と猫くらいしか刻み込まれていないのですけど、その尾道テーマのてのひら怪談募集がありまして、今更ながらその報告となります。

 

応募作『類似』 佳作

 

たいへんありがとうございました。

人生の励みになります。

 

いつもどおり、気持ちの悪い話です。船と魚が出てきます。

受賞作は↓のリンクで読めるようなので、ぜひお時間あったらご一読を。

尾道てのひら怪談

 

尾道性あれで良かったんですかね。瀬戸内には『浮鯛抄』(ぐぐろう!)とかそういった話があるなあ、ってのぼんやり知ってた程度なんですがそれネタです。これが尾道にも該当するのか心配でした。そこらへんに関心持ったのが、

 

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

幻の漂泊民・サンカ (文春文庫)

 

 これ読んで出てきた海の漂泊民「家船」だったんで、まあ、何がネタとして功を呼ぶかわからんですね。

 

以下、参加したほか2作『割ることでしか』『ヘッドライトの先で』はせっかくなのでここに掲載いたします。もったいない精神です。サイトの方にもありますが、拙作にコメントくださった方どうも本当にありがとうございます。嬉しいです。

あと、反省点はあれですね。猫避けてもっと尾道堀ったほうが面白いのできそうでしたね。

 

 

■『割ることでしか』

女子の方が大人に見えて、二歳年上ならなおさらだったけど、幼馴染のマキとはよく遊んだ。お姉さんのマキを手下みたいに扱えるのは気分が良かったし、マキは僕に懐いていた。マキは少し、頭の足りない子だったから。

だからいつも僕がリードしていた。マキが欲しがるから、僕が教えたんだ、ビー玉の取り方。あの店のビー玉はラムネ瓶を割らなきゃ取れなかった。がきん。テトラポッドに叩きつけるのさ。がきん、って。

飛び出た小さなビー玉を掌で転がして、マキはそれこそガラス玉みたいに目を輝かせて、聞いたことない歓喜の声をあげた。「中身」そう言った。「きれえ」そうとも言った。

次に会った時、マキがテトラに叩きつけていたのは野良猫だ。

「中身」へしゃげた猫を小麦色に焼けた腿に乗せて、つまんだ目を夏の太陽にかざした。「きれえ」熱に浮かされたような見たことない、艶めかしい目つきをしていた。

 やっちゃいけないことだ。許されない。だからそう言った。でも、みんなに黙っててあげる、代わりに。魔が差した。浮いた汗、擦れる肌、脱がせた水着の痕が白く……テトラポッドの影で、僕はマキにさ。

 鶏。野良犬。亀。がきんがきんっ。マキは次々割った。飛び出た中身を掌に載せて、僕の胸に擦りつける。いつの間にか主導権を握っていたのはマキだ。「中身」腰を押し付けながら、マキは笑った。僕を使って彼女は自分の中を探っている。がきん。知りたいの。

取り返しのつかないことをした恐怖が胸に詰まって、咄嗟にマキを突き飛ばした。

 がきん。

 マキがテトラに頭を打ち付けた瞬間、僕は確かに見た。流れる血と一緒に転がった、赤く小さな玉。あっけなく潮だまりに落ちた。

抱えたマキの頭は軽く、きっとマキの脳みそは陽の光を纏いながら、あぶくを出して沈んでいった。ラムネみたいにね。きれえ。

 

 

 

■『ヘッドライトの先で』

家族旅行で行きました。平野に暮らしていたから、坂に家が貼りついたアスレチックみたいな町は、路地裏を歩いているだけで冒険みたいで、生えていたねこじゃらし草を振り回しながら、ずいぶん楽しかった気がします。両親が止めるのも聞かずに、細い坂道を上がったり下ったり。誰もいない場所にはぐれてしまったら、道端には猫の首がぽつんと置かれていました。三毛でした。

あの猫は、首だけで、みい。って鳴きました。猫は痛くもなんともないふうで、まん丸な目で僕を見ました。事故でしょうか、身体の方は1メートルばかり先に横たわっていて、倒れた角パイプが中世の処刑器具みたいに首のところへありました。猫はいま手足を舐めれないことが不満げで、不思議そうでした。

いたずらに胴体を切り離されたクワガタの頭は、飼育箱のなかで顎を開いて威嚇してきましたし、動物がこうなることに対して幼い僕はあまり違和感がありませんでした。でもあのクワガタは長くなかったことが可哀そうで、僕は猫の頭をもう一度くっつけてみようと思いました。どうにかなる気がして、近づいて頭を両手で持ち上げると、動物を触るのは初めてだったな。毛の生えた皮膚の裏に、固い骨、匂いは香ばしかった。でも僕はポケットに突き出たねこじゃらしをすっかり忘れてた。そいつが揺れて、突然赤い口を開けた猫に驚いて手を放したら、落ちた生首は坂道を転がって、どこかの暗がりに消えちゃいました。あとはもう、動かない猫の胴体だけ。僕が殺してしまったような、嫌な感じだけが残りました。あれは現実でしょうか、それでもあの状態で息のあった猫は偶々なんでしょうし、助けられたとも限らないでしょ。

だからって、あなたは別だ。取り扱いには気を付けて。横転した貨物トラックと、ぺしゃんこに潰れた僕の車を見つけた君には。

そう言った男の、アスファルトに乗ったまなざしが、ヘッドライトに照らされた。